2018年7月7日土曜日

薬価と物価

2018年4月からの薬価改定により、新薬開発に影響が出るという記事が散見されます。 実際どのような影響が出るのかと思って軽く調べてみました。ちなみに私は門外漢の一消費者です。

まず改定後の薬価については、まとめるよりは厚生労働省の資料をそのまま見たほうが正確なのでそちらも置いておきます (原文)。 細かいところを省いてざっくり言えば、
  • 改定に伴い薬価は医療機関等での販売価格の加重平均値(税抜の市場実勢価格)×(1+消費税率)+調整幅を基準値とする
  • 先発薬品は販売から5-10年目にジェネリック医薬品が存在への置き換え率を元に1.5%〜2%の割引率を適用する
  • 後発品への置き換えが進んでいる先発薬品は販売10年-13年目にジェネリック医薬品の薬価の2.5倍〜1倍へ段階的に引き下げる
  • 後発品への置き換えが進んでいない先発薬品は販売10年-15年目はジェネリック医薬品の薬価の2.5倍〜1.5倍へ段階的に引き下げる

販売額が大きい銘柄は基礎的医薬品や、不採算品などいくつかの条件で基準値が加算される薬品もあるようですが、 だいたいは上記のようになるようです。 おそらく大きく変化したのは新薬が市場実勢価格によって毎年6%価格引き下げされる点が、 5年間の価格保証と価格引き下げ率の減少率が最大でも2%になった事でしょう。 これは新薬を開発するのに大きな変化と言えるとは思います。


薬価改定を見た時、門外漢の私はこれで米国の薬価基準に近付いたのかと思ったのですが、 この資料を見る限り実際には全然違いました (p10)。

私が気になったのは米国に新薬の薬価は自由に変更可能(物価上昇に伴い上昇するのが一般的)という部分です。 米国は毎年2-3%のインフレをしており、そして通貨価値も上昇しているため、 医薬品が輸入超過の日本は毎年上昇する薬価を輸入している事になります。 1990年を基準にすると米国は2.03倍に物価が上昇しており、日本は1.15倍の上昇率になっています。 これに対しドル円はどこを基準にするか難しいですが、110円〜140円である事から物価差以上の変化はありません。 さらに米国はジェネリック医薬品も自由価格で売買されるため、製薬会社が自由に薬価を吊り上げている問題が知られています。 つまり2倍近い物価上昇率や米国市場の薬価の影響をモロに受けているという事になると思います。

こういった状況を見ていると、薬価が改定されたから薬品企業に大きな問題があるという訳ではないと思います。 どちらかと言えば以前から創薬にきちんと力を入れていた会社はむしろ競争力が強くなりそうだし、 またより重要と思われるのは海外での医薬品の戦略的取り扱いや、承認期間の差などではないかと思いました。 日本の承認期間が長い事は知られていて、当然長ければ長いだけ競争力は失われる事になります。 条件付き早期承認制度の導入など改善はなされているようですが、この点は大きな差がありそうです。 こういった枠組みが変化すれば、医薬品の価格は大きく下がるのではないかと感じますし、 日本の医薬品業界にも良い意味での変化があるように感じます。

ふと気になって調べていただけなのですが、思いのほか面白い事が色々とわかりました。

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