2018年8月9日木曜日

物価上昇+人件費上昇=低収益企業の赤字化

吉野家が人件費や物価上昇によって2期連続の赤字になっていました。 まあ4Qは固定赤字なので、実質的には1Qで久々の赤字という状態だと思います。 単一期での判断は危険ですが、吉野家というか飲食業は全体的に少し気になる兆候が出ている。

飲食企業は景気に左右されないと言われていますが、 私の理解で言えばこれはインフレ率の安定、低賃金の安定、円高による仕入れ価格の安定が大きく、 固定需要の利益保証と、雇用保証に役立った事によるものだと思っています。 またこのような外食チェーンの成功によって売上至上主義が進んだのではとも思っています。 しかし様々な諸経費が値上がりする中、こういった事業の前提が崩れてきて、利益を残すのが大変になっているように見えますね。 他にも中国の牛肉需要の爆発的増加や、和牛の世界的人気などで仕入れ価格が上がっている事なども、さらに利益を圧迫する要因になっていそうです。

人件費と利益の均衡値の近い飲食業は、少し人件費が上がっただけで会社利益が結構飛びます。 また日本は景気がアレでもインフレ率を上げていますが、これによって起きる事は消費の低下です。 インフレ率が異常上昇すると当然ながらここも削られていくと思います。 まあ実際には外食率は安定してるので何とも言い難いですが、 ステルス値上げで消費者も敏感になっているので、外食でも意識される程度に消費が落ちてくると下がるかも知れない。 アパレル系では既に値引きで利益を増やす状況になっているのは印象的です。

このような情勢を見ていると、低収益の飲食業はたいていの企業よりよほど景気の影響を受けている気がします。 株価も赤字が出るまでは上がっていたのですが、 2期連続の赤字を出した事で少し下がりました。どうやら赤字は嫌みたいです。 ただ株価に関しては飲食企業全体で同様の傾向があった事のほうが理由として大きいような気もしますけどね。


飲食企業は値上げとインフレ率の問題以外にも、 出店数を増やす事で誤魔化している会社が多い事は気になります。 出店数は増えていて全体的には伸びているけど客足そのものは値上げで減少しているようなところが多い。 でも値上げと人件費増の問題が解決できず出店数を増やすと、 客足が止まった時に採算が取れなくなった店舗は潰すしかありません。 これが自動車企業だったりすると生産調整で対処可能なので影響は小さいんですが、 飲食業はお店を潰す以外に手がない。 客足が一気に止まるような状況にならないと明るみにはなりませんが、潜在的リスクは大きい。

このような飲食業の情勢を見ていても、日本で利益率の低い事業は今後厳しいのかなあとも思っています。 利益が伴わなくてもそう簡単に潰れる事はないと思うけど、会社利益は残せなくなる。 そうなると株価だったり補修費に転換できなくなる。 そのためインフレターゲットに耐えるためには利益主義にしないとバランスが取れない。 それが明確になってきたと思います。 といって値上げをすると客足も減ってしまいやすい業態なので、 単純に物価を上げて人件費を上げればみんながハッピーとはなかなかなりにくいと思う。

解決案としては、例えば米国の飲食企業がわかりやすい例を示しています。 米国の飲食企業は実にぼったくり企業(笑)なのですが、 それが世界中で通用しているのはブランディングに成功しているからです。 日本の飲食企業は安さ志向ですが、味で見ればまったく引けを取りません。 そのようなブランディング路線に舵を切れれば、一番ハッピーなのではないかと思いますね。 そういう意味では和食を海外に広める潮流は良い路線なのかも知れません。 ただ日本国内でそれをやっても客足が遠のくだけという気もしますけど。

他にも大阪城公園でのたこ焼き販売で1億3千万円脱税がバズっていましたが、やはり儲かっているところは儲かっているんだな、と改めて思いました。

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